歯と口のトラブル

急に歯が痛いのを放置するとどうなる?

急に歯が痛い症状が出ると、気になって集中できなかったり、夜眠れないということがあります。急に歯が痛くなる原因は何なのか、放置するとどうなるか、歯科医院へ通院するまでの痛みを促進させない応急処置などを含めて詳しくご紹介いたします。

急に歯が痛いのはどういう状態?よくある初期症状

昨日までなんともなかったのに、急に歯がズキズキするという突然の歯の痛みは、日常生活に大きな支障をきたします。特に、夜間や休日に限って痛くなりがちで、歯医者さん開いてない時間帯に歯痛は困るという声が多いのも事実です。

よくある初期症状

  • 冷たいもの・熱いもので歯がしみる
  • 何もしなくてもズキズキと痛む
  • 噛んだ時にピリッと鋭い痛みが走る
  • 顎の奥の方まで響くような感覚がある
  • 頬や歯ぐきが腫れている感じがする

このような初期症状があった場合は、お口の中に何か異常が起きているSOSサインです。

急な歯の痛みで考えられる原因ベスト6

では、一体どのようなことが原因で痛みが出ているのでしょうか。急な発症にはある程度の傾向があります。

① 虫歯(う蝕)の進行

初期は白い歯の色で無症状でも、神経(歯髄)に近づくと一気に痛みが強くなります。

  1. 虫歯菌の産生する酸によりエナメル質がまだらに溶けると濁った白色になる
  2. エナメル質はどんどん溶けて内部の象牙質に進み、茶色や黒色の穴が開く
  3. 自覚症状(違和感・歯のしみ・口臭)があり、歯髄や歯根まで進行すると痛みが大きく、膿もでる

歯髄が死ぬ(失活)と、根管治療という神経が入っていた髄腔や、歯根である根管を掃除する必要があり、時間が掛かるため、早めの治療を行ってもらいましょう。

② 歯の根っこの炎症(根尖性歯周炎)

歯がしみても歯科医院へ行かず放置していると、神経が死んだ歯髄壊死(えし)となります。死んでしまった歯髄に対処しなければ、歯の内部にいる細菌により歯髄が腐敗し、歯髄壊疽(えそ)の状態です。歯髄内部の細菌が歯根の先にある根尖孔から広がってしまい、歯根の先端に炎症が発症して膿が出る状態でどの部分の歯にも起こり得るのが根尖性歯周炎です。ある日突然噛む時では無くてもズキズキとした激しい痛みが起きたり、炎症が酷くなれば熱が出ることもあります。

③ 親知らずの炎症(智歯周囲炎)

奥歯の位置に鈍い痛みや腫れが起きている場合は、智歯(ちし)周囲炎が疑われます。親知らず(智歯)の周囲が炎症を起こす原因として、現代人の顎の狭さにより、親知らずがまっすぐに生えず、斜めや横向きに生えたり、親知らずが埋まったまま出てこない埋伏歯になっていることが挙げられます。親知らずはオーラルケアがしにくい奥にあることから、細菌や食べかすが溜まると炎症を起こし、腫れたり、膿が出たり、口を開けづらくなる開口障害になります。更に重症化すると頬部蜂窩織炎(きょうぶほうかしきえん)という病気に安ってしまい、発熱やリンパの腫れを伴い、水も飲めなくなります。

④ 歯ぎしり・食いしばりによる負担

歯ぎしりや食いしばりが癖としてある場合、日常的に噛み合わせる歯はダメージを負っています。癖がない人に比べて通常より歯への負担が大きいため、歯にひびが入ったり、割れたりする歯根破折も起こってしまいます。歯髄の周辺組織がダメ―ジを負っている場合、知覚過敏になりやすいです。飲食の温度により歯がきーんと痛んだり、神経を含まない組織が痛んだ場合は鈍痛を感じることがあります。

⑤ 歯周病(歯ぐきの炎症)

歯を支える歯ぐきや骨が炎症を起こして腫れてしまう細菌感染です。

  1. 歯垢が溜まり、歯茎が赤く腫れて3mm弱の隙間が出来て炎症が起こる歯肉炎
  2. 歯周病の細菌が歯根膜や歯槽骨を攻撃して炎症や出血が酷くなり、5mm弱の隙間が出来る歯周炎(軽度)
  3. 歯槽骨が半分弱破壊されて歯がぐらつき、7mm弱の隙間が出来る歯周炎(中度)
  4. 歯槽骨が半分位破壊されて歯がグラグラした状態で、膿が出てい7mm以上の隙間がある歯周炎(重度)

⑥ 歯の詰め物・被せ物が外れた、合わなくなった

歯の詰め物や被せ物などの補綴物(ほてつぶつ)が経年劣化で歯と合わなかったり、段差があった場合、その隙間から細菌が入ります。補綴物の中で虫歯や炎症が起きると、目視で確認出来ず静かに内部で進行してしまうため、神経まで刺激され、突然痛み出します。

突然の歯痛の多くは、じわじわ進行していた問題が限界を超えた瞬間に起きます。そのため、急に痛くなったように感じることが多いのです。

放置するとどうなる?痛みの種類別・進行リスク

そのうち治るかもと希望的観測で放っておくと、口腔内の環境は悪化します。

放置したら起きること

歯が痛い状態を放置すると、百害あって一利なしと言えます。ケース別に挙げていきます。

虫歯

神経が死んでしまうと、痛みを感じません。痛みがないから、もう虫歯が治ったのかと思う人がおられますが、むしろ逆です。腐敗した神経から歯根の先まで虫歯菌が移動し、膿が溜まり、それを放置すると顔まで腫れるような状態になります。

歯周病

歯茎や歯茎の下の骨が痩せてしまい下がってしまうと、歯がグラグラになります。歯が抜ける原因で最も多いのが歯周病です。日本人の約8割がかかっていると言われているほど、浸透している疾患です。

親知らず

親知らずが鈍く痛いけどと放置すると、親知らずの前に隣接する奥歯(第二大臼歯)が虫歯になることがあります。第二大臼歯は咀嚼機能を果たしている噛み合わせに重要な歯ですので、噛みにくくなると、他の歯へ余計な負担が増します。また、親知らずの周囲の炎症が口腔全体に広がることも考えられます。

歯のヒビ

歯のヒビがあるとヒビを手掛かりに、細菌が内部へ入り、感染が進行します。歯が割れると抜歯対象になることもあり、歯を失うことになると、義歯治療をしなければ他の歯との噛み合わせを保てなくなります。顎の骨や副鼻腔に炎症が波及してしまうと、治療も大がかりになりますので、放置はせず早めに治療を受けましょう。

痛みを感じたらやってはいけないNG行動と応急処置

歯の痛みを感じた時にやってはいけないこと、応急処置についてご説明します。

やってはいけないこと

痛みを覚える際にやってはいけないことは下記の通りです。

体を温める

浴槽で温まったり、カイロを貼るなどの行為は、血流が良くなってしまい、痛みが悪化します。歯が痛い際は、シャワーでさっと清潔にしましょう。

強く触る・押す

痛みを感じる場合、炎症が広がる可能性があります。指で強く触ったり、グイッと押すようなことはやめましょう。

市販薬の多用

痛み止めを用法・用量より多く服用するのは身体のためによくありません。一時的に紛れるだけで、根本解決にはならないですし、危険な行為です。

自宅でできる応急処置

自宅でできる応急処置は下記の通りです。

冷やす

保冷剤をタオルで包み、頬の外から当てて冷やしましょう。面倒だからと氷を舐めて直接患部を冷やすと、冷たい刺激が伝達し、より痛みが増す可能性があります。必ず患部の外側から冷やすようにしてください。

痛み止め

市販されているロキソニンやイブなどの鎮痛薬を一時的に服薬するのは有効です。ただし、決められた用法・容量を守って服用してください。

刺激物

食べ物や飲みものは、歯の痛む間刺激物を避けてください。冷たいもの、熱すぎるもの、甘いもの、酸っぱいものはより痛みが増すことがあります。

柔らかい食事を心がけ、患部を使わない

しっかり歯で噛まないと飲み込めないような固い食事はやめましょう。なるべく患部を使用しないでいいような柔らかい食事にしてください。

何よりも重要なのは、できるだけ早く歯科を受診することです。

再発を防ぐために大切な日常ケアと受診のタイミング

歯が痛いと駆け込み対処してもらってもまた繰り返しては嫌になってしまいます。

日常ケア

歯の痛みを繰り返さないためには、1日2回以上の丁寧な歯磨きが重要です。特に寝ている間は唾液の分泌量が減少し、細菌が繁殖しやすいので、就寝前はデンタルフロスや歯間ブラシを使って隙間汚れも除去しましょう。歯ぎしりが癖づいている方は、歯科医院でナイトガードというマウスピースを作製してもらい、歯への負担をやわらげましょう。親知らずは歯科医院で相談して、抜歯のタイミングや抜歯方法、リスクについてしっかり説明を受けることが望ましいです。

歯医者受診のタイミング

歯科へ受診のタイミングは下記の部分を考えましょう。

  • 2日以上ずっと痛みが続く
  • 痛みが強くなってきて夜眠れないレベルである
  • 歯茎が腫れて膿が出ている
  • 顔が腫れている
  • 風邪でもないのに熱が出た

早めに受診すれば、治療は軽く回復も早いですが、重度になると、治療期間もそれなりにかかります。忙しいからと我慢していると、後で大ごとになる可能性があるので、早めにスケジュールを合わせましょう。

まとめ


急な歯の痛みは、原因を知って正しく対初をしましょう。蓄積していたトラブルの警告であり、原因は虫歯・歯周病・歯ぎしり・親知らずなどさまざまです。放置して痛みがなくなったのは錯覚で実は重度に進行していることが多く、治療も複雑且つ長期に渡ります。冷やす・薬を使うなどの応急処置をしつつ、早めに歯医者を受診して相談しましょう。